
歯科技工士ってどんな仕事なの?



どうやったらなることができるの?
歯科技工士についてみなさんどのくらいご存じでしょうか?
この記事では歯科技工士の私が「厚生労働省」と「公益社団法人日本歯科技工士会」のデータを参考に、歯科技工士の仕事内容や資格の取り方、歯科技工業界の現状を解説します。
記事を読むことで歯科技工士がどういう職業なのかがわかり、歯科技工業界がどのような状況にあるかを知ることができます。
歯科技工士は人の健康を支えるやりがいのある仕事です。
超高齢化社会であるこれからの時代では、さらに需要が高まることでしょう。
歯科技工士に興味があり、進学や転職で迷っている方はぜひご覧ください。
歯科技工士の仕事は歯科技工物(詰め物・入れ歯など)を作ること


歯科技工士とは歯科医師の指示にしたがって、詰め物や被せ物などの歯科技工物を製作する仕事です。
とても小さい歯科技工物を精密に作るため、繊細な技術が必要になります。
歯科技工士が患者の前に出てくることは少ないため、普段見かける機会はないかもしれません。
しかし歯科治療に歯科技工士は欠かせない存在なのです。
歯科技工士が製作するもの
歯科技工士が製作する歯科技工物は大きく3つに分類されます。
- 歯の詰め物や被せ物(インレー、クラウン、ブリッジ)
- 入れ歯(総義歯、部分床義歯)
- 矯正装置
この他にもエピテーゼ(失われた顔や体の一部を補う人工物)や、スポーツマウスガードを製作するのも歯科技工士の仕事です。
また歯科治療の保険治療と自由診療では、使える材料や作業工程が異なります。
歯科技工士のおもな就業先は「歯科医院」と「歯科技工所」
歯科技工士の就業先は「歯科医院」と「歯科技工所」が多いです。
歯科技工士の就業場所の構成割合は、2022年末の調査で「歯科技工所」が 72.9%と最も多くなっています。
病院・診療所で働く歯科技工士は24.8%、その他の就業場所に勤務している歯科技工士は2.3%です。
“


”
引用元:厚生労働省|令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
歯科医院では一緒に働いている歯科医師からの指示で歯科技工物を制作します。
その歯科医院の仕事を全般的に引き受けることになるので、広く経験を積むことができるでしょう。
また治療に立ち会う機会もあるので、自分で製作した歯科技工物の良し悪しを直接確認することもできます。
こまめに歯科医師と相談しながら作業を進めることができるので、患者一人ひとりに合った歯科技工物をより丁寧に製作できるでしょう。
歯科技工所では歯科診療所や病院からの注文を受け、歯科技工物の製作から納品までの一連の作業を行います。
場所によって専門分野が違うので、その分野に特化した専門性を高めることができるでしょう。
独立開業することもできる
歯科技工士は開業権のある国家資格なので、独立開業することができます。
開業することによって、大幅に年収を上げることも可能です。
また自分の生活サイクルに合わせて仕事をすることもできるでしょう。
最近では歯科医療業界のデジタル化により、設備投資の費用が高くなる傾向があります。
独立開業をして仕事を得るためには、高い技術力や営業力も必要です。
歯科技工士の初任給は18万6500円〜20万7500円
歯科技工士の初任給は18万6,500円〜20万7,500円程度となっています。
国家資格ですが経験や技術が求められるため、初任給はそれほど高くはありません。
しかし経験を積み、技術を身につけることで給料も上がっていく傾向にあります。
歯科技工士全体の年収は「300~400万円未満」が一番多いですが、働く場所や経験年数、独立開業をしているかどうかによっても大きく異なります。
参考:公益社団法人日本歯科技工士会|令和4年度 歯科技工士基準賃金表
参考:公益社団法人日本歯科技工士会|2024歯科技工士実態調査報告書
歯科技工士になるには国家試験に受かる必要がある


まずは歯科技工士養成学校を卒業する
歯科技工士国家試験を受験するには、歯科技工士養成学校を卒業(卒業見込み含む)することが必要です。
歯科技工士養成学校は全国に48校(2023年11月現在)存在してます。
2年制か3年制の専門学校と2年制の短期大学、4年制の大学がありますが、どの養成学校でも受験資格に差はありません。
また数は少ないですが、夜間部を併設している学校もあります。
国家試験に合格して歯科技工士免許を取得する
歯科技工士国家試験は年1回2月に全国統一で実施されます。
2024年に実施された歯科技工士国家試験では、受験者数835人のうち合格者799人、合格率95.7%という結果でした。
養成学校で学んだ知識と技術があれば、ほぼ合格できると言えるでしょう。
歯科技工士国家試験に合格した後は、厚生労働大臣の指定の登録機関に免許の申請が必要です。
申請すると歯科技工士名簿に登録され、歯科技工士免許が交付されます。
これで正式に歯科技工士になることができるでしょう。
歯科技工業界の現状とこれから


歯科技工士は離職率が高い
歯科技工士は離職率が高いと言われています。
新卒の歯科技工士においては、約80%が5年以内に離職するそうです。
離職理由としては残業が多く長時間労働が常態化していることや、収入が見合っていないことなどがあげられます。
しかし近年は働き方改革や歯科医療のデジタル化によって、徐々に改善される様子も見られます。
歯科技工士の高齢化が進んでいる
歯科技工士として働く人の高齢化が問題になっています。現役の歯科技工士として働いている人を年齢別に見ると、若い世代が少なく50歳以上の世代が過半数を占めているそうです。
歯科技工士全体の人数も減少傾向にありますが、高齢世代が引退すると大幅な人員不足になることが予想されます。
以上のことから新たな歯科技工士の需要がますます高まるでしょう。
実際に歯科技工士養成学校の求人倍率は10倍~20倍以上となっており、新卒者は就職しやすい状況になっています。
“


”
引用元:厚生労働省|令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
歯科医療のデジタル化によって作業効率が上がっている
歯科医療のデジタル化によって、歯科技工物の製作時間が短縮されました。
素材によってできるものは限られますが、パソコン上で設計して機械が削り出すことで製作します。
デジタルで製作したものでも、最後は人の手で調整することが必要です。
歯科技工士はAIや機械では代替できない精密な技術が求められるため、この先デジタル化が進んでも必要不可欠でしょう。
まとめ【これからの時代は歯科技工士の必要性が高まる】
今回は歯科技工士の仕事内容や資格の取り方、歯科技工業界の現状を解説しました。
歯科技工士は資格を取れば終わりではなく、日々新しくなる材料や技術を勉強する必要があります。
技術を上達させることは大変ですが、人の健康を支えるやりがいのある仕事です。
超高齢化社会に突入していく日本では、入れ歯やインプラントなどの需要も増えると予想されます。
これからの時代に歯科技工士は、ますます必要性が高まることでしょう。